大阪高等裁判所 昭和36年(う)567号 判決 1961年7月06日
被告人 竹岡清男 外一名
主文
原判決中被告人竹岡清男に関する部分を破棄する。
被告人竹岡清男を懲役一年六月に処する。
同被告人に対する原審における未決勾留日数中九〇日を右本刑に算入する。
被告人杢錫伊の本件控訴を棄却する。
同被告人に対する当審における未決勾留日数中六〇日を懲役刑に算入する。
理由
被告人竹岡清男の趣意第一点(イ)について(省略)
同(ロ)及び弁護人岸本晋亮の補充趣意について
記録によると、被告人は昭和三五年一〇月一四日判示第一の窃盗に該当する被疑事実によつて兵庫県灘警察署において逮捕状を執行され、直ちにこれを自白したが、その後同月二二日に司法警察員に対し判示第三の(一)及び(二)の各窃盗の事実について供述したこと、灘警察署係官は被告人の右供述があるまで、判示第三の(一)の盗難の事実を知らず、同(二)については盗難の事実を知つていたが、その犯人を知らなかつたことが認められる。刑法第四二条第一項の「未タ官ニ発覚セサル前」とは、犯罪事実が官に発覚しない場合及び犯罪事実は発覚していても犯人が何びとであるか発覚しない場合を意味し、かような場合犯人が自らその犯罪を捜査官に告知した以上他の罪を犯した疑いがあるものとして逮捕されその取調中になされても、自首にあたると解するを相当とする。しかし自首減軽すると否とは裁判所の自由裁量に属する事項であつて、自首を認めないことをもつて原判決の認定又は法令の適用に誤りがあるとして論難することはできない。
(その余の判決理由は省略する。)
(裁判官 松村寿伝夫 小川武夫 柳田俊雄)